「スクールカースト」という言葉は実に衝撃的ですね。
私なんかは「カースト」といえば、インドにおける身分制度の「カースト制度」しか思い当たりません…
今や「スクール」と「カースト」というまったく相いれない言葉が、学校現場で結び付けられるとはおぞましいとしか言えません。
「カースト」というくらいですから、そのヒエラルキーに名称が付いています。「派手組」「真面目組」「オタク系」「地味組」(あるいは1軍2軍、3軍)などです。単なる仲良しグループなら可愛いものですが、そう生易しいものではありません。
「スクールカースト」って何?
学校内のクラス内で勉強以外の能力や容姿などにより各人が格付けされ、階層が形成された状態をそう呼んでいます。階層間の交流が分断され、上位の者が下位の者を軽んじる傾向があります。そのため、いじめの背景の一つともみなされています。
歴史的には1990年代から学校内に序列があることが指摘されていました。欧米では1990年代初期ころからヒエラルキー化が意識されるようになりました。
「スクールカースト」とは現代の日本の学校空間において生徒の間に自然発生的に生じる人気の度合いを表す序列を表現した言葉です。
その特徴の一つはいじめとそうでない状態が明確に区別されるわけではないことです。
下位カーストの悲哀
と、定義してしまうと本質が見えてこないですよね。最下位の「カースト」に格付けされた生徒はいったいどんな学校生活が待っているのでしょうか。気になります。
能力が未熟だったり、容姿など生まれつきの条件で底辺のカーストに置かれてしまいます。俗に言う「ぼっち」になるわけですね。それは単なる立ち位置の呼び名でないことは明白です。
なぜなら、「一軍になりたい」などという「スクールカースト」の低いことを卑下する悩み事が多く見られます。
彼ら彼女らは、教室内での自分の立場を守るために、空気を読むことを「神聖」というほど大切にし、より上位のカーストに登ろうと必死にもがいているのです。かと言って自己主張が全くできないと、やはりいじめの被害にあうリスクが高いのです。
きわめて陰湿な「スクールカースト」
「スクールカースト」には次のような暗黙の「掟」があります。
・放課後の掃除は完全分業制で真冬の寒い時期の雑巾がけは「下位グループ、「上位グループ」は負担の少ない箒掛けのみを行う。
・「下」の生徒が化粧して「上」の生徒に目をつけられないかを考え、相応しくないと考えたら化粧したくてもしない。
・クラス替えの時期に心機一転で「上」を目指して努力しても、学年で情報が共有されているので序列逆転は不可能。「イメチェン」に必死になる姿は嘲笑の対象となる。
・「上」の生徒が「下」の生徒に「おまえ、マジむかつく」と言うと「下」のランクがさらにさがる。教室内の人事権は「上」が握っている。
・リアルタイムブログと呼ばれる日記サービスにおいて、パスワードで「閲覧を許可された人」と「閲覧できない人」に分けられる。定期的にパスワードが変更されても教えてもらえない場合がある。教えてもらえなかったらことによって身分が「下」に下がったと認識する。これを「リアルに鍵をかけられる」というそうです。等々
一方、上位者はそれなりの悩みがあるようです。
上位者は「権力」を持っているが故にホームルームなどでみんなが黙っている時に「上位」の人間が発言しなければならない。例えばみんなが早く帰りたいという雰囲気なら、「上位者」はそういう空気を積極的につくらなければいけない
というのです。これはこれで苦痛なのでしょうね。
スクールカーストは大人社会の投影なのか
子供の社会は大人社会の投影であるのは常です。「スクールカースト」という言葉が登場したのと同時期に大人社会では「モラルハラスメント」という言葉が登場し、職場でのいじめや、労働者にやりがいなどを煽り巧みに搾取するブラック企業の存在が明るみになっています。
もっと単純にアイドルグループの「総選挙」も影響があるように思えます。単純すぎるでしょうか。
いじめのメカニズムは明確になっている
「いじめ」の根本原因は、実はかなりはっきりしていると思います。
それは日本の小・中・高等学校教育では授業は、選択科目以外はほぼすべて同じメンバーで同じ教室で行われます。
大学では各人がかなり自由に科目を選択するので、高校までと違うと思われるかもしれませんが、必修科目である一部の専門科目や英語などで同じメンバーが同じ教室で顔を合わせることが多いようです。
つまり学校という共同体自体が過度の密着を強制する装置になっているわけです。
そこにおいては、あまりにも否定的な体験(虐待や迫害、過度な密着の強制など)が積み重なって、その結果リアリティを感じられなくなり、自己肯定感覚がゆらぎ始ます。
そして不全感を癒すために自らが全能者として人やモノや事柄をコントロールしたいという全能欲求が生まれます。その「他者コントロール」の中にいじめがあります。
まとめ
- 「スクールカースト」とは現代の日本の学校空間において生徒の間に自然発生的に生じる人気の度合いを表す序列を表現した言葉
- 下位カーストは、常に差別され、いじめの対象となっている。上位カーストに這い上がるは極めて困難
- 下位カーストに対して掟とも言えるきわめて陰湿ないじめがある
- 大人社会のハラスメントの影響があるのでは
- いじめのメカニズムは、学校という共同体が過度の密着を強制しているので、否定的な体験が積み重なっていくことにある
いじめは、残念ながらなくなっていません。文部科学省の統計では2017年の学校でのいじめは、過去最高の32万件となっており、その解消率は9割以上になっています。とても信じられない率です。(関連リンク文部科学省)
ほんとうなら徐々にでも減っていくものだと思いますが、増えていますからね。