定年後の再雇用者がなぜいわれなく「老害」と呼ばれるのか

年老いた社員を表現する古い材木仕事

 私は、元気のあるうちに、60歳以下で選択できる制度を利用して早めにリタイアしました。おかげ様で退職して10年経った今でも、現役時代よりも元気だと自負しています。今からでも好きなことはなんでも挑戦したいという気持ちもあります。

 今では定年退職者の継続雇用が法整備され65歳まで同じ会社で働くことが可能となりました。

 果たしてその実態はどうなのでしょうか。

スポンサーリンク

継続雇用者を老害と忌避する若手社員たち

クールで尊敬される上司を目指すが的外れで馬鹿にされる

 改正高年齢者雇用安定法が施行され(2013年)定年を迎えた働き手を、従業員の希望があれば最長65歳まで雇用を延長することが企業に義務付けられました。これによって職場では様々な問題が起こっているようです。

・次年度の契約を確保するために、なかなか業務を引き継がない再雇用者の存在

再雇用者は戦力外で損失でしかない

管理職の人を定年後、再雇用する必要ない

・談笑やネットサーフィンばかりしていて、利益になることは何もしていない

・技術職のような人ならともかく、事務職の場合は引継ぎさえできれば業務には支障なし、人件費をもっと若い人に使ってほしい

・若手に雑用を頼み、仕事の肝の部分を手放さない。

 とうとう先輩を「老害」とまで言ってのけています。私も再雇用で職場に残っていれば同様だったのかもしれませんが…。

 確かに上のような意見は事実であるし、まったくごもっともなことだと思います。しかし、このまま世代の対立を煽ってもなんの解決にもなりません。若手に対して「先輩をもっと尊敬しろ」と言っても空虚な掛け声にしかなりません。

しかし一方では、事業主側に経験を積んだ再雇用者の力を十分に生かしきれていない問題もあるのではないでしょうか。

スポンサーリンク

定年再雇用者と若手社員との反目をなくす

若手社員に老害だと馬鹿にされて落ち込む帰り道に見た綺麗な夕暮れ

再雇用者は、定年前と再雇用後では所属する部署や仕事内容が替わるということはよくあることです。それでベテランであっても新しい仕事を覚えるのに時間がかかり、即戦力にならないのはある意味当然のことです。

そうではなく、当たり前のようなことですが、今までの部署や仕事内容にこだわらず、培ってきた能力をしっかり見直すとともに、再雇用者の性格や価値観、社会性、意欲などの特性や考えることが肝心だと思います。

そうすれば若手は再雇用者に対して人生の先輩として尊敬するでしょうし、再雇用者は若手に対して今までの経験や知識を惜しげなく伝えていくでしょう。

スポンサーリンク

再雇用だけが定年後の生き方ではない

不満のある状況を変えたくて黒電話の前で面接の電話をかけようか迷っている

 再雇用が法律で義務付けられて以降、多くのサラリーマンが60歳で定年を迎えた後、再雇用制度の下で働くようになりました。しかし、この制度は退職者の年金受給までの無収入と無年金という状態を、なくすことが強く求められていたからであり、それ以上の積極性を持ったものとは言えません。

定年を迎えた後に、「過去の上下関係によるプライドが捨てられない」という窮屈さから今の会社に残ることをよしとせず、別の会社に転職する人もいます。定年後の働き方として実はこの「転職」は決して悪くない方法だと思います。

さて、再雇用者の労働意欲が大きく減退する最も大きな理由というのは「立場が変わることによる責任と権限の大幅な低下」によると言われます。

 転職は、退職前の会社における地位とともに上下関係や人間関係をリセットできるわけですから、労働意欲の減退などということはなく、自分の能力だけを武器に新たな挑戦ができるわけです。

スポンサーリンク

働けて働く意欲のある人はいつまでも

 今後一層高齢化が進み継続雇用の「老害」が増えることは目に見えています。

若手社員は、新しい仕事も覚えないばかりか、仕事もろくにしない継続雇用者に不平ばかりを言い、継続雇用者は自分の地位を守ることばかりに腐心し、若手社員との間に壁をつくってしまう。 そんな職場環境は精神衛生上まったくいいわけありません。

 「老害」をつくらないためには、まず事業主側の雇い方の問題の改善が必要です。それと定年制度の廃止を実現することです。定年制がなくなれば、来年は雇用されるのかわからない不安定な状況がなくなり、心理的にもゆとりを持って仕事に培ってきた力を発揮できるし、後輩社員には十分な引継ぎをすることも可能です。

これまでの定年制の議論というのは、年金制度の設計との関係で定年年齢を何歳までとするのかという狭いものです。こういった方法とは決別しなければならないと思います。

健康寿命は現在70歳を越えており、現時点で定年制を廃止しても肉体的にはなんら問題はありません。深刻な人で不足の中、元気なうちは働き続けてほしいという会社も増えています。

スポンサーリンク

定年後再雇用で老害といわれる問題まとめ

1.継続雇用者を「老害」とまで呼ぶ若手社員が増えている

2.即戦力にならない継続雇用者を職場にうまくマッチングさせる方法はある

3.再雇用だけでなく、転職という第二の人生もある

4.継続雇用者は今後も増え続ける 定年制と年金制度を切り離し、定年制の廃止などの抜本的な改革が必要。

今も進行中ですが、AIの普及に伴い、人に代わってAIが仕事を奪うことが現実的になりそうです。今後10年~20年で47%の仕事が機械に取って代わられるという研究もあります。

一方で「人生100年」と言われるほど寿命の延びがあります。この二つが進行すれば街には失業者があふれることになってしまいます。

今までのような場当たり的な対応では持たないことは明らかです。今までにないドラスティックな発想と改革が必要です。