虫は嫌いという方は多いものですが、外で見ることがない蚕は別かもしれません。学校や家で蚕を飼って一度は観察したことがあるのではないでしょうか。蚕の真っ白い姿や蚕が作る繭は印象的ですし、そこから絹が取れるなんてとても神秘的ですよね。
蚕は小さい時に見ただけだから覚えていない方も多いかもしれませんが、そんな蚕の一生はとても短いことをご存じでしょうか?蚕を知ってもらう為に蚕の一生についてご紹介していきます。
蚕とは
蚕とは、チョウ目のカイコガ科に属している昆虫の一種です。成虫の正式名称は「カイコガ」といいます。確かに幼虫は蝶の幼虫に似ていますし、ふ化した時に蝶っぽくなりますよね。桑の葉を食べ、絹のもととなる繭を作る不思議な力をもっている昆虫です。蚕の歴史は古く、5,000年以上も前から、中国で家畜化されていたのだとか。
私が蚕を始めて見たのは、今から数十年前に小学校に通っていた時でした。和菓子が入っていたような箱に蚕を何匹か入れて、教室で飼育していたのを覚えています。短い期間の間にどんどんその形を変えていく姿は、子供ながらにとても興味を持ち、こまめにその変化を絵に書いていました。
子供が管理している中でも蚕は育っていったのですが、これって一般的な昆虫では難しいことですよね。実は、蚕は野生では生きていくことができない昆虫なのです。だから、外で取ってきた蚕を室内で飼育するのではなく、元々人間が管理している状態で育てられるしかないのです。
寂しささえ感じさせる蚕
例えば、蚕を外に出して蚕が大好きな桑の葉にとまらせたとします。野生回帰力をもっている昆虫であれば、自ら動いて葉を食べるものですが、蚕の足に力はなく木に自力でくっついていることもままならないのです。最後は食べられてしまうか、地面に落ちてしまい死んでしまうのだとか。昆虫なのに外で生きられなんて、寂しさを感じてしまいます。
蚕の一生
蚕を飼育した方なら、蚕がどのように姿を変えていくか目にしたことがあると思います。蚕のメスが生む卵の数は非常に多く、500個に及ぶといいます。卵が孵化すると、1齢の黒色の毛に覆われた大きさ3mm程の幼虫が姿を現します。
蚕は、桑の歯を食べながら成長し、生後4日程度で1回目の脱皮をし、生後1週間で2回目の脱皮をします。生後17日程度までに最後の脱皮をして、5齢で終齢を迎えると蛹となります。この頃には、蚕の色はクリーム色っぽい色になってきます。繭作りに適した場所を探しまわり、食べた葉は全部排泄します。
繭になる準備に入る
繭を作る頃の蚕は7㎝くらいの大きさに成長しており、体重もふ化した時の1万倍になっています。また、蚕が絹を作る絹糸線は、ふ化時と比較して16万倍に増えるというのですから驚きですね。頭を無限大のマークを描くようにふり、糸を吐きながら約2日間かけて自分の周りを完全に覆っていきます。
繭の中で蛹と化し、12日程度で羽化して成虫となります。蚕は、成虫になるとすぐに交尾をするのですが、絹を必要とする養蚕場では全ての成虫を残しません。繁殖用の成虫だけを残して、絹糸をとるために加熱するので、ほとんどの蛹は成虫になれずにその一生を終えているのです。
繭から絹糸を取る方法とは
蚕の一生は、本当に儚くあっという間に終わってしまうものですね。蚕のことで次に気になるのは、繭からどうやって絹糸を取るのかということではないでしょうか?先に説明した通り、蚕が絹糸を吐き始めて2日程度で繭が完成します。
繭から絹糸を取る方法
- まず、沸騰しない程度の温度のお湯に繭をつけておく
- 約40~50分程度繭を煮ると、段々と意図にお湯がしみて繭がほぐれてくる
- そのような状態になったら繭をぬるま湯か水につける
- 絹糸の端を探して、しっかりとした紙などに巻き付けていく
繭から絹糸を取る方法は難しいと思いきや、意外と簡単なんですね。ただし、湯でる前に成虫が羽化してしまった場合、その繭はたんぱく質分解酵素の働きで絹の繊維が短く切断されてしまいます。その繭を煮ても綺麗な絹糸にはならないので、注意が必要です。
まとめ
- 蚕は、チョウ目のカイコガ科に属している昆虫の一種
- 5,000年以上も前から、中国で家畜化されていた
- 蚕は、野生回帰力がなくなっているので野生では生きられず、人の力が必要
- 蚕は、ふ化してから脱皮を繰り返し、生後17日程度で蛹になり、絹糸を吐いて繭を作る
- 蚕の一生は、ふ化してから20日くらいで終わってしまう