「正味の話…」と吉本新喜劇でこの会話がよく出ると思います。
みなさんも関西の芸人さんやタレントさんがテレビでこんな会話を聞いたことはないでしょうか? いったいどういう意味なのでしょうか
標準語というか一般的には、物の外皮や装飾などの余分なものを除いた物自体の本当の中身のことを言います。食品などで「正味1キロ」などと言います。砂糖や塩の袋に印刷されているのをよく見かけますね。
正味の意味を辞書で引いてみる
とりあえず、国語辞典のごやっかいになりましょう。小学館の「言泉」を調べてみますと、次のように記載されています。
- ものの外皮や、装飾を除いた、本当の中身 例「皮が厚くて正味はごくわずかだ」
- 本当のもの。本物。また、裏面にかくされた真実。
- 実際の数。真実の数量や目方。また、掛け値なしの値段。
表面には表れていない隠された真実ということになるのでしょうか。
関西弁、若者言葉としての「正味」の意味
本来の意味と同時に、関西弁としての使い方が広くいきわたっており、なじみがあると思われますので、関西弁の使用法をみてみます。
関西弁では「本当のところ。実際のところ。」という意味で用いられ、日常会話で頻繁に使われています。
かっては漫才師の横山やすしさんが、この「正味」という言葉を連発していました。それをダウンタウンの松本さんが以前バラエティ番組でまねをしていたことで、一気に流行ったというのが定説みたいになっているようです。
また若者言葉として関西弁の流用から、大学生を中心に若い人たちの間で全国的に広まりました。「本当のところ。本当は。」「正直。正直なところ。」「結局。結局のところ。」という意味合いですね。
「正味」を使った日常会話の例文
日常会話として実際に使われている場面を例文としてあげてみます。
<標準語の場合>
「会社の勤務時間は朝9時から夕方5時までの8時間なのですが、休憩の1時間を除くと“正味”8時間労働になります」
「きのうネットで買ったTシャツは、正味の値段なら1500円だけど、送料こみなら2000円だ」
「バナナはけっこう皮が厚いから、結局のところ正味は何グラムなんだろう?」
「この小麦粉は、正味600グラムです」
<関西弁の場合>
「正味しんきくさい話やな~」
「正味の話、あの子のことほんま好っきやねん」(話題を変えるときに使う)
「それ高いのはわかったけど、正味なんぼなん?」
「正味ヤバない?」
日本語本来の言葉である「やまとことば」から「正味」の意味を探る
さて、本来の日本語は「やまとことば」です。ここで「やまとことば」に「正味」に当たる言葉を探ってみると、「まこと」につきあたります。
現代でも使いますが、日常会話で使うことはあまりないかもしれません。
この「まこと」を「正味」を使う文にあてはめてみると、文章の意味が通じるものもあれば、なにかしっくりとこないものもあります。
また「まこと」は、けっこう幅の広い言葉で「本当、本物であること。」以外に、「誠実でうそ偽りのない心」「話題を転じるときや、話の途中で思い当たったことを言い出したりするとき、念を押す気持ちを込めて用いる言葉」とあります、「ほんまにまあ」「そうそう」「まことに」という意味合いです。
副詞として用いれば「間違いなくその状態であることを強調する語」となり、「本当に。実に。」という意味になります。
時を経て、漢語の「正味」が入ってきて、「正味」の方が使い勝手が良かったのでしょうか、「まこと」にほぼ取って代わったのでしょう。
まとめ
- 辞書をひいてみると簡単に意味はわかりますが…
- 関西弁としての使い方、若者言葉としての使い方には少しニュアンスが違う
- 正味を使った実際の例文を、本来の意味と関西弁とを比較する
- 日本語本来の言葉である「やまとことば」では、「まこと」である