最近、死後離婚が急増しています。
テレビなどで「死後離婚」という言葉を聞いたことがある方もいると思います。
ですが、「死後離婚」とはなんなのか、基本的な部分を理解している方は多くないのではないかと思います。
今回は、そもそも死後離婚とはなにか、死後離婚した場合の戸籍はどうなるかなどについて説明していきます。
分かりやすくするために、「夫に先立たれた妻」という設定で説明をしていきますが、ほとんどの場合は反対でも同じことが言えるので自分に当てはめて読んでみてください。
死後離婚とは?
「死後離婚」はその名の通り配偶者が亡くなった後にする離婚のこと…ではありません。
そもそも“婚姻関係”は夫が亡くなった時点で終了しているのです。
では「死後離婚」がどのようなものなのかというと、「婚姻関係終了届」という書類を提出して“姻族”との関係を終了させることを指した造語です。
夫と結婚した際にできた義理の両親やきょうだい、いわゆる“姻族”との関係を法的に断つのが目的です。
姻族関係終了届
先程、「姻族関係終了届」を出すことにより、“姻族”との関係を断つことができるとお話ししました。
この「姻族関係終了届」を出すのに、相手方(姻族)の許可は必要ありません。
また、姻族関係の終了は妻(提出側)の戸籍にしか反映されません。
ですから、姻族に知られることなく関係を終了させることができるのです。
さらに、提出に期限は存在しませんので、義父母の介護が必要になったなどのタイミングで提出することも可能です。
✓戸籍
死後離婚とは、先ほどお話しした通り造語です。
実際には、離婚を成立させるためのものではありません。
では、戸籍はどうなるのでしょうか。
「姻族関係終了届」は姻族との関係を断つものです。(子供がいる場合は、子供も同様)
戸籍が外れることはありません。また、姓も変わることはありません。
戸籍を外したり、姓を旧姓に戻したい場合は、「復氏届」というものを、加えて出さなければいけないのです。
ただし、結婚前の戸籍に戻るには父母か未婚の兄弟の誰か1人でも生存していることが条件となります。全員が亡くなっている場合、もしくは全員が結婚している場合、新しい戸籍をつくることになります。
遺産や遺族年金
遺産は相続開始時(死亡時)の配偶者が相続人と定められていますので、受け取った後に死後離婚をしたとしてもなんの問題もありません。
また、公民年金や厚生年金の被保険者が亡くなった時に支給される遺族年金に関しても、要件さえ満たしていれば死亡時の配偶者が受け取ることが可能です。
業務上の事故で配偶者を亡くした時に支給される遺族補償年金などの制度に関しても同様に受け取ることが可能です。
義父母の遺産
夫の遺産は受け取れることがわかりましたが、義父母の遺産はどうなるのでしょうか。
そもそも妻には義父母の遺産を受け取る権利はありません。
夫が亡くなったということは、遺産を受け取れる人がいなくなったということなのです。
しかし、子供がいる場合には子供を通じて受け取れることがあります。
夫の子供(義父母の孫)はたとえ妻が死後離婚したとしても、祖父母と孫の血族関係は切れませんので子供が義父母の遺産を「代襲相続」することになります。
もともとは子供が受け取った遺産なのでどのようにするかを決める権利は子供にあるのですが、そこは子供と話しておくことで遺産を家に入れてもらうことができれば結果的に死後離婚後に元義父母の遺産を受け取れるということになります。
まとめ
死後離婚について話してきましたが、まとめると…
- 死後離婚は姻族との関係を断つこと
- 姻族に内緒で関係を断つことができてしまう
- 死後離婚しても戸籍や姓は変わらない
- 遺産や遺族年金は死後離婚後であっても受け取れる
- 元義父母の遺産は子供を介して受け取る方法はある
ということです。
実際は死後離婚をせずに良い関係を築くのが1番だとは思いますが、このように法的に関係を断つ手段があることを知っておくことで心が楽になるのではと思います。
ですが、遺産やお墓の管理などに関しては、ただただ縁を切ったから全てが解決というわけにもいかないので、死後離婚してから何かトラブルが起きることを避けるためにも、ちゃんと話しておくべきではあると思います。
死後離婚を考えている方は、これを参考にベストな方法は何か考えてみてください!