スクールカウンセラー(以下SC)とは、学校において、児童・生徒の個人的な悩みや問題を聞き、指導助言(カウンセリング)を行う専門のカウンセラーのことを言います。1995年より旧文部省による「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」の展開が始まり、全国の小・中・高校に導入されるようになりました。
2013(平成25)年度には、*配置箇所数は、20,310箇所で、1995年の154箇所から約130倍、予算では1995年の3億7百万円から38億9200万円へと約13倍の増加となっています。(*配置箇所数とはSCが配置されている学校と派遣されている学校、教育委員会への配置を含む)
SCになるには
そもそもSCという資格は存在しません。SCに必要な資格の種類は、自治体の応募要件が多少異なっていますが、おおよそ次のようです。
- 臨床心理士
- 精神科医
- 児童生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識及び経験を有し、大学の学長、副学長、学部長、教授、准教授又は講師の職にある者又はあった者
となっています。
現状では8割が臨床心理士です。SCになるためには、まず信頼と実績のある臨床心理士を目指すのが最も良いでしょう。
<臨床心理士の資格を取る方法>
臨床心理士の資格を取るためには、特定の大学院の卒業と、資格試験の合格が必要です。
臨床心理士とは、臨床心理の分野において日本で最も広く普及している民間資格の名称、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格です。教育、医療、保健、福祉、司法、産業など活躍の範囲は多岐にわたります。
臨床心理士資格取得の受験資格を得るには次のいずれかの学歴(および経験)が必要です
・第1種指定大学院を修了
全国に155校ある指定大学院を修了
・第2種指定大学院を修了
・臨床心理士養成のための専門職大学院を修了
・医師免許取得者で、取得後、心理臨床経験2年以上を有する者
・諸外国で上記と同等の教育歴+日本国内での心理臨床経験2年
日本のスクールカウンセリングは日本型なのか?
臨床心理士とは、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間のこころの問題にアプローチする「心の専門家」とされており、日本の場合SCは臨床心理士有資格者が8割をしめています。日本のスクールカウンセリングにおいては、不登校やいじめの初期段階などの子供を対象に、問題の早期解決を図る。あるいは深刻な問題を抱えた特定の子供を対象に問題解決を図るという問題行動に対する事後対応的な「治す」カウンセリングが主です。
それに対し、予防的カウンセリングがあります。問題行動の予防を目的とした予防教育を実施する。子供の成長促進や予防に力点を置いたカウンセリングや教育プログラムを計画的に実施するという、先を見越した成長促進的・予防的「育てる」カウンセリングです。
カウンセリングは、前項のような特徴があり両者のバランスのとれたスクールカウンセリングの構築の必要性が言われています。
カウンセリングの功罪
前章のようなSCを肯定的にとらえ、それを改善発展させる考えに対し、このSC発足の際には、「社会臨床心理学会」の次のような問題指摘もありました。無視できない指摘ですので、紹介します。
簡単に言えば、生徒の学校生活上のさまざまな問題(いじめ、暴力行為、不登校、非行など)を解決する責任は管理側の教師ですから、SCの配置はそういう管理側の問題を個人の問題へと転嫁させることにより、カウンセリングが不当な管理の技術になり得るということです。SCが精神科への安易な橋渡しになり、問題の本質が学校にあったとしても、精神科によって当人の脳に問題があるとされ、改善されるべき本来の問題は無視される可能性があります。そして脳に問題があるとか、認知に歪みがあるとか、発達に問題があると評価される危険があるということです。
SCと役割と教師とのすみわけと協力体制
とは言っても、教師とSCとの専門性の確保と両者の密接な連携の中で学校教区が正常に発展すること望まれます。
教師は授業を主体とする教育活動を、SCは子供たちの成長促進や問題解決を担って、両者の専業化と分業化が確立していってバランスのとれた体制が必要でしょう。
その中で、SC勤務は標準でわずか週1回8時間、教師といえば「ブラック」といわれるほどの忙しさです。この面での改善がなければも上記の問題も「絵に描いた餅」と言えます。
まとめ
- SCになるためには複数の道があるが、「臨床心理士」が最も一般的で社会的評価が高い
- スクールカウンセリングは日本歩的な特徴がある
- カウンセリングの技術は管理の技術になりかねない側面がある
- SCと教師の専門性も確保と密接な連携が必要
SCを目指そうと考えている方には、資格をとるのも難しく、学校現場も大変厳しいものがあります。それに待遇は、多くは非常勤職員という身分のため週に何日か決められた時間だけ出勤するという働き方であり、給料は時間給で平均的に自吸3000円から5000円です。複数の学校をかけもちしていればある程度の(1か月30万円以上も)収入になりますが、勤務時間が少なければ15万円にも届かないこともあります。このあたりを十分に考える必要がありそうです。