定年による再雇用での労働条件低下の仕組みを徹底解説!

はかない仕事

定年制とは、企業の従業員が一定の年齢に達したことを理由として退職、雇用契約を終了させること、その制度についていいます。海外では定年制のある国もあれば全くない国もあります。

それどころかアメリカでは定年制は年齢を理由とする事業主の差別行為であるとされています。

現在の日本ではもちろん定年制は存在しており、多くの会社では60歳か65歳を定年退職年齢と定めています。その歳を過ぎた後に働きたい場合には再雇用となりますが、ほとんどの場合で給料など、労働条件は低下します。

なぜ日本ではこのような制度になっているのかを徹底解説していきます!

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定年は年金がいったい何歳からもらえるのかが問題

5年間無給

定年の現状について「平成29年就労条件総合調査 結果の概況」(厚労省)を見ると、定年制を採用している会社は、同調査に回答した4,432社のうち95.5%でした。定年制を採用している会社の79.3%が60歳定年、16.4%が65歳定年となっていました。

一方、年金開始年齢については、老齢厚生年金(報酬比例部分)は現在65歳への支給引き上げの途上にあり、以下のように順次支給年齢が繰り上がっていきます。

  • 昭和3042日~昭和3241日生まれの方は62歳から
  • 昭和3242日~昭和3441日生まれの方は63歳から
  • 昭和3442日~昭和3641日生まれの方は64歳から
  • 昭和3642日~以降に生まれた方は65歳から

受給できることになっています。

2025年度(女性は2030年度)に至ってその計画は完成します。この時点ですべての国民が65歳からの支給となります。

ということは、60歳定年を採用している79%の企業の定年退職者は、無収入の状態で、最大5年間待たなくてはならないということになります。

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無収入、無年金の期間はいったいどうするの?その答えが再雇用

トンネル

そこで政府は、定年退職者が抱える経済的・社会的問題への対策(年金受給までの空白期間への対応)として、高年齢者雇用安定法の改正により65歳定年制または継続雇用制度の拡充などを図ってきました。65歳定年制や継続雇用制度が全事業所に実施されたなら、年金受け取りまでの待機期間がなくなるわけですね。

高年齢者雇用安定法は、65歳未満定年を定める事業主に対し、原則として希望者全員に65歳までの雇用の機会をあたえなければならないとしています。その具体的方法として、3つの措置のいずれかを講じるよう義務付けています。

  1. 当該定年制度の廃止
  2. 当該定年の引き上げ
  3. 再雇用制度の導入

何やらパッチワークのように穴の開いた部分をふさいでいるようですね。長持ちしそうにもありません。

採用している措置の実態は、「再雇用制度」を選んだ企業が72.2にのぼっています。もっとも人件費コストが低く抑えられるのが要因であることは言うまでもありません。

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「背に腹は代えられない」のが労働者の偽らざる心境

企業は原則として希望者全員に65歳までの今日の機会をあたえなければなりません。しかし、高齢者雇用安定法は定年前とまったく同じ労働条件で雇用の継続を希望する全従業員を、再雇用することを義務付けているわけではありません。

つまり、業務内容や給与、勤務日数、1日の勤務時間などの労働条件は、事業主は自由に決められるのです。たとえどんな条件あっても「背に腹は代えられない」というわけですね。

ただし、労働契約法第20条は「有期の雇用契約の場合の労働所条件について、正社員の労働条件と比較して不合理に低いものであってはならない」と定めています。つまり再雇用社員の雇用契約は、大半のケースで1年契約などの有期雇用とされています。ですから労働契約法第20条の定めを守る必要があります。

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定年制度は60または65歳で良いのか

夕日

定年の年齢をどうするかは、常に年金の受給開始年齢の引き上げと関連しています。

年金受給開始年齢の引き上げは、高齢化と少子化が進む中で、避けて通れないかのように政府は国民を脅します。そして年金受給開始年齢がまた上がれば、定年の延長か再雇用の延長になるのでしょうか。

いたちごっこですね。

その際にはまた年金受給開始年齢の繰り上げの年次計画が必要となるでしょう。なんと面倒くさいことでしょうか。年金機構のミスの元を作るのはやめましょう。

この際、定年制と年金受給開始年齢の問題は切り離すべきじゃないかと思います。定年制の廃止することこそが健全な社会への飛躍となるものだと思います。

なぜこの定年制が日本では根強く残っているのでしょうか。障壁となっているのが、「終身雇用」と「年功序列」および「企業内労働組合」だと言われています。

どれも打破するのは困難な問題です。しかし、一方では少しづつ崩れつつあるのも事実です。いかんせんその変革のスピードは遅々としています。いっそのこと法制的に上からの義務付けが必要だろうと考えます。

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まとめ

  1. 定年年齢と年金受給開始年齢はコインの表と裏のよう、年金受給開始年齢を上げると定年年齢をあげなくてはならなくなるか、雇用の継続?
  2. 定年退職者の雇用継続は「再雇用」主流
  3. 「再雇用」の労働条件は、事業主の言い値にならざるをえない。
  4. 定年年齢を年金との関係で徐々に上げていくなどの姑息な方法でなく、抜本的に定年制の廃止に向かうべき

2016年の『健康寿命』が男性72.14歳、女性74.79歳です。『健康寿命』は「健康上の問題で日常生活制限されることなく生活できる期間」と定義されています。

当然今後も伸び続けていくでしょう。健康で働きたいと希望する人は可能な限り働き、第二の人生を歩む人はその道を。

高齢者が職場に残れば若者が就職の機会を奪われるなどどいう議論がありますが、人口減と人手不足の中、そんな議論が通用するでしょうか。